
精神科医がこころの病気を解説するCh
チャンネル登録者数 67.2万人
22万 回視聴 ・ 3771いいね ・ 2020/11/23
煽るようなタイトルにしてしまい、申し訳ありません。
患者さんの話を聞きながら、患者さんそのものを理解していく作業から、患者さんに必要な情報を伝えるために、受け入れやすいアドバイスをするために、相手の話を聞き、理解しようとするという話をしていました。
ややこしい話なので、誤解を生むだけだったと思います。
ただ、こういう話もYouTubeなら良いかな、と思ってアップしてみました
漠然と聴くというよりも、治療のために聴くということはどういうことか?
一方で、あまりにも誘導的だと問題がありますし
そこらへんのバランスは重要だなと思います…
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00:00 今日のテーマ
08:34 診察で何が行われているのか
11:07 1.心理的安全な場所
18:49 2.吐き出すことができる
22:02 3.リモデリング
23:00 4.アドバイスに従ってもらう
24:58 受けいれてもらうために聞く
26:14 まとめ
「精神科医が何のために話を聞くのか」について考えてみたいと思います。
精神科の治療は会話が大事、聞くことが大事といわれますが、本当に大事なのでしょうか? 昨日来院した2人の初診患者さんを見て、今日のテーマを思いつきました。
<精神科医が話を聞く理由>
一般的な「話を聞くこと」のイメージと、精神科医が「話を聞くこと」は違います。
実は、精神科医は診断や治療方針の決定、患者さんを理解するために話を聞いているのではありません。患者さんの問題点は最初の5分くらいで道筋がつくことが多く、また治療や薬のバリエーションも決して多くはないものです。
薬も大きく分けて抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬、ベンゾ系抗不安薬・睡眠薬、その他の5種類しかありません。
ではなぜ話を聞いているのかというと、患者さんのリズムを感じ取ったり、この人にはどのようにアドバイスをしたら見立てを受け入れてくれるか理解するためです。言ってみれば、話を聞きながら相手のことを考えている、話に集中しているけれど話そのものには集中していないような感じです。
つまり、患者さんに対して自分で考える、決める、自立が大事でそのために一緒に考えていきましょうと僕は言いますが、それを受けていれてもらうための言葉を見つけるために聞いているということです。自立の問題がある人ならばそれを受けいれてもらう、そのためにどういう言葉を使うかを考えます。そういうと、精神科の治療に対してあるであろう「共同作業」や「親身になる」というイメージとは違うかなと思います。
<診察で何が行われているのか>
診察の流れの中で次の1〜4のどれが一番大事だと思いますか?
1.心理的な安全な場所を提供する
2.他では言えないことを吐き出すことができる
3.話を整理、リデザイン(リモデリング)する
4.アドバイスに従ってもらう
一番大事なのは「4.アドバイスに従ってもらう」です。
アドバイスに従ってもらうために1〜3があります。2や3がメインだと思っている人が多く、4が精神科の核だと思っている人は意外といないのではないかと思います。2がメインだと思っていると、吐き出すことがあまりできず不満を持つ人もいるかもしれません。
これはラーメンにおける麺が主役なのかスープが主役なのかという議論に似ているかもしれません。本当のところは全部大事なのですが、今回は4が大事ということで進めていきます。ちなみに、1〜4のように定義することにより、PDCAサイクルを回しやすくなり診療も上手くなるので定義付けは大事かと思います。
<心理的安全な場所>
心理的安全な場所というのはGoogleの「心理的安全性」からもらってきました。診察室が安全な場所だと思ってもらうということです。Googleは、心理的安全な場所がないと自由なディスカッションはできないし、クリエイティブな発想は出ないと言っています。
心理的安全を阻害する要素は、「無能だと思われること」「無知だと思われること」「邪魔していると思われること」「発言がネガティブだと思われること」の4つです。診察ではこれらが全部大丈夫だよという場所を作る必要があります。
例えば、医師は信頼できる人間であること、嘘をつかない、秘密をもらさない、診察室は音がもれないといったことが大事です。僕がSNSやYouTubeをやるのは、心理的安全性が高まるとわかっていたのでやっている面もあります。
それでは、心理的安全を阻害する4つの要素を詳しく見ていきます。
「無能だと思われること」
無能と思われるのではないかという不安がありながら、一方で自分が病気である、障害があることを認めてほしいという思いもあります。このバランスが患者さんの中にあるため、医師が「あなたは障害なのだから」というと「私は無能だと思われた」と傷つくし、「あなたは無能ではないよ」という方に振り切ってしまうと「先生は全然障害だと思ってくれない」と思われてしまいます。バランスの取り方でしくじることもあります。
「無知だと思われること」
若い人には無知だと思われたくない人が多いのですが、実際に経験が少ないのですから嫉妬とは何か、社会のルール、暗黙知など知らないことは多いわけです。パワハラをしてくる上司にどう対応するのか、パワハラしそうな人がいた時にどう立ち回れば良いのかなど少しずつ学習していけば良いのですが、相手のプライドを傷つけないように言わなければならないので難しいところです。
「邪魔していると思われること」
私がこんなに喋ったら邪魔なのではないか、診察が始まったらすぐに帰らなければならないのではと思ってしまうと、安全な場所だと思えなくなってしまいます。かと言って30分も延々と話されると診察に遅れが出て、他の患者さんから受付にクレームが行くなど困ったことになってしまいます。僕がよく「診察は5分」と言っていますが、それによって少なくとも5分は確保できるということなのでフェアなのではないかと思います。
「発言がネガティブだと思われること」
ネガティブだと思われたくなくてポジティブな発言をするのですが、あまりにポジティブだとマニック・ディフェンスや躁的万能感というか、ポジティブに見せかけて本音を言わない人なのかなと思ったりします。特に夜の仕事をされている方はポジティブな発言が多く、「全然傷ついていないです」「寝れないだけです」「仕事は全然辛くないです」と言ったりします。ですが、実際は辛いから診察に来ているわけです。こういった発言はマニック・ディフェンスなのでネガティブに寄せてあげたりするのですが、寄せすぎると今度はその人のマニック・ディフェンスを崩してしまい「先生なんかに私の気持ちはわからない」と言われることになってしまいます。
<吐き出すことができる>
僕が「吐き出すことができる」という言い方をしたのは、精神分析が好きだからです。
フロイトは、1893年にブロイアーと共著で「ヒステリー研究」という本を出しました。その中に出てくるアンナ・Oという女性の治療において「話すことでよくなる」ことが書かれています。それまでは催眠術が精神科の治療でした。喋って吐き出すことをアンナ・Oは「煙突掃除」と表現しています。
確かに、歌うと気持ちが良いのと同じように、喋ると気持ちが良いものです。聞いてもらえると一体感を得られますし、共感してもらうと気持ちがよく、これを「除反応」と言ったりします。「気持ち良い」と言うとバカにしていると思われるかもしれませんがそんなことはなく、体を使って心を理解していく、癒していくことは大事な作業です。ただ、これが過ぎるとマニックな感じになってしまいますし、吐き出すだけだと内省が深まっていかないこともあります。
かといって、患者さんの話を聞いているだけで5分が過ぎれば「先生は何も言ってくれない」となってしまうでしょう。自分が喋ったのと同じくらいの分量を医師にも喋ってほしいと思うわけですが、時間に限りがあるためそうは行きません。
逆に、患者さんがあまり喋らないのでこちらが誘い水のように話すと「先生ばかり喋って」となってしまいます。この辺りのバランスを取ることも大事です。
<リモデリング>
患者さんの悩みをロジカルに整理してポジティブなものに言い換える作業も必要です。患者さんが知らないことはこちらが心理学、精神医学などで補強します。これを解釈と言って、患者さんにこちらの理解を伝えます。相手を見つつ、相手が理解できるものを伝えるということです。
<アドバイスに従ってもらう>
精神科医は本当にアドバイスできるの?正解を知っているの?と思われるかもしれません。人生に正解はないでしょ?と言うかもしれませんが、だいたいあるのです。もちろん、本当の意味では知りませんが、どうすれば精神科に来るほどの不幸から抜け出せるかということについては大体わかります。
病気だったら薬を飲む、規則正しく生活する、白黒思考をやめる、欲望や感情に支配されすぎない、社会の暗黙知を知る、ネガティブすぎずポジティブになるなどです。患者さんはこれらの極端なところへ振れているので、真ん中の方へ引っ張ってくれば良いだけなのです。ですので正解がわからないということはなく、5分くらい話を聞けばこの人の特徴から見てこういう部分でトラブルを起こしているのだろうなとわかります。読みが外れることはあまりありません。
ただ、相手に理解してもらうために聞くというのは結構難しいです。テクニックというかセンスがあります。はじめに言ったように最初の2、3分は相手を理解するために聞くのですが、そのあとは脳の80%くらいはどうやったら相手に僕らの言葉を理解してもらえるだろうと考えるために使っています。相手そのものを理解するために使うのではなく、同時に相手が受け入れられる方向を理解する言葉を見つけるために聞きます。逆に、だから短いということもあり得ます。
本当に混んでいる時などは、治療方針はわかっているので「それではこうしてね」で終わってしまうこともあるかなと思います。他の病院でそういう先生がいました、あの先生が言っていることは正しいのですかと聞かれたりしますが、正しいことも多いのです。
以上、今回は「アドバイスに従ってもらう」を主役に見立てて診察を整理して語ってみました。
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#精神科の診察 #話を聞くとは #心理的安全
コメント
使用したサーバー: wata27
@fuutotoro
前に通っていた精神科医はアドバイスがうまくて、話を聞いてもらえると次の診察までの1ヶ月を耐えることができた。言葉を頂くと力が湧いて心から安心できた。5分間診療をせず30分近くしっかり話をしてくれた。貴重な心療内科だった
@takenakao485
精神科医です。すごく共感した動画でした。「患者さんの話聞いててしんどくならない?」とよく聞かれますが、頭の80%は治療方針を考えてるからしんどくならないです。
@hagy04
対人関係でうまくいかない人にとって、5分で伝えたり汲み取ったりってそもそもかなり難しいんだと思います…。
わたしも毎回聞きたいことを問診の前にメモにまとめたりしても聞ききれなかったり、伝えようと思ってたこと一つも言えずに終わって涙目になることが多いです…。
@noahxjpn7511
精神的に本当に辛くなって、眠れない食べれない状態でフラフラになりながら精神科へ行ったものの
人前では絶対に弱った姿を見せられなくて、元気に装ってしまい、精神科医に貴方は病気じゃないから大丈夫と言われ、弱い抗不安薬や眠剤を出され、次の診察の時には、ほらもう元気になったね!
と言われ、元気になったフリをして帰った事があります。
家族にも誰にも自分の本当の辛さを出せないので、私がここまで思い詰めてるとは分かってもらえません、怠けてると思われています。
自分の性格的問題だと諦めていますが、辛いです。
@DARA-uc6rp
画面越しですが、これはいい先生と出会えたなぁと思っています。漫然とした疑問や知りたい事を教えて下さる動画大変有難いです。
@ケニさん
関係性が必ずしも深くない割に、自己開示度の高いことを話す場である精神科特有の大変さもあるのでしょうかね。
周囲の誰にも言えないことを精神科の医師に話すってこともありますし。
精神科医師であるとはいっても、「この人に話して大丈夫だ」と実際に感じられるかは重要だなと思います。
@ringoapple1155
引っ越しの度に心療内科、精神科を変えざろうえない経験があり、色んな医師を見て何となく医師の表情、声と手の動きで何とな~く医師の意思が分かりようになってきました😊
@tomoyanwest_the_3rdkindness
「医師の指示に従って頂く」ワタシもこれが一番気が楽になります!何かにつまづいたら疾患と医療の所為にしてきました。正直、主治医さんの指示通りに生活してた時が充実していました。ホントに世の中フェイク情報が多すぎて症状が悪くなる💢先生を信じたいのに🥲
@4516-m7c
医師も色々で、益田先生のような患者への対応ではなく担当医は患者の話す言葉に飽き飽きしている様子です。
@ゆんゆん-c3i
前の精神科の担当医がイケメンすぎて毎回緊張してました(笑)心拍数120とか🤣 私だけかと思ってたら待合室でおばちゃんが「先生がカッコよくてドキドキしちゃう❤」とハート奪われているのを見て、あ、私だけじゃないんだなと安心したことがありますwww 患者が安心して話せる場所の5つ目にイケメンはダメを入れて欲しいwww
@こてつ-j7j
私の感じてた通りのお話です。
鬱状態で4年通ってますが
Dr.は、話の中身と言うよりは
話し方、視線の動き、態度を見ておられるように感じてました。
診察室は時により完全に安全とは言えないと感じています
@いこ-c5p
ポジティブに見せかけて…
意図して見せかけているわけじゃないけど、人前では元気そうにしてしまう、一人で勝手にはしゃいでしまう。自分でもこの状況に困っている。
「はしゃぐふり 楽しんだふり 元気なふり 今日も大変よくできました」
は本音に反してこんなふうになってしまう。
@はづき-p7r
私の通ってる心療内科は医師と看護師が一緒にいて、しかも衝立越しには内科医が他の患者さんと話している状態なので私、今死にたいんです、なんてとても言える場所ではないです。
@渡辺永子-s7b
先生の話わかりやすいし、楽しいですね〜
歳を重ねるとあちこち調子悪くて、内科の先生や
コロナの患者さんを最前線で治療してくださってる先生の話や
メンタルクリニックの先生の動画見たりしています
雑談を交えながらまた聞かせて下さい。
ありがとうございました〜
@うーたん-n6m
診察内で本音が言えてなかったりすることが多くて、にっちもさっちもいかなくなってから、初めて本音を先生に告白するということがあります。
先生に心を開くことが怖くてできていないのだなと思います。
@kailavender3940
電話相談員の養成講座で、傾聴のことは言われてきました。
いや、でも、表情の見えない電話で長い傾聴は無理です笑
講座を担当した先生からは、「あなたは自由におやんなさい。」と言われたので、自由にやらせていただいています。
益田先生の過去の動画を見ていくのもなかなか楽しいですよ。
心を扱う仕事はセンスが大事ですね。
@Natsuko45-z5p
精神科に行くことさえイヤだった初診の時に、あっさり抗うつ剤を出してくれて、大丈夫だよ〜って言われた意味が分かりました😌
@nharada207
ありがとうございます!
@むち-v4o
患者側です。担当医には毎回メモを渡しています。
伝えたい事はメモに書いて補足として話す事もありますが診察は短めにしようと思っています。
話したい事は心理士さんに話して、心理士さんと担当医は同じ病院で連携しています。
@黒あむ
薬さえもらえれば自分の心の内を話す気も無いし手っ取り早く終わらせたい
という自分みたいなタイプにとっては空気感を読んで
深く近況や状態変化を聴いてこないで診察に5分もかからない病院は大変重宝します
ある意味そのほうが双方やりやすいのかもしれないですね